こころの健康
Online ISSN : 2186-0246
Print ISSN : 0912-6945
ISSN-L : 0912-6945
報告
自殺予防に関連する心身の健康への意識についての住民調査
――熊本県あさぎり町における「こころとからだの健康づくりに関する調査」から――
岡本 洋子下地 明友坂本 香織吉田 拓郎瀧澤 透渡邊 直樹
著者情報
ジャーナル フリー

2010 年 25 巻 2 号 p. 75-87

詳細
抄録

[抄録]本調査は,熊本県地域自殺対策推進事業の一環として,あさぎり町民の心身の健康の実態の把握と今後の こころとからだの健康づくり,そして自殺一次予防の施策の基礎資料作成を目的とした。本町の特徴として,一つ 目に家族形態で3 世代同居全世帯が22 . 4%と,夫婦のみ世帯20 . 2%をわずかだが上回っていることが挙げられる。 二つ目は,年齢層において50歳代で飲酒と喫煙に関し「毎晩飲酒」が28 . 9%,「1 日に1 箱喫煙」が13 . 9%と他の年 齢層より高いが,全国との比較では,ストレス対処で,男性の「アルコール」や「たばこ」が低いことがわかった。 三つ目に性別では,いちばんストレスと感じることを男性が「経済的なこと」「仕事」と挙げているのに対し,女 性は「対人関係」であった。ストレス対処については,女性の「じっとたえる」が高い結果を示した。
 さらに,心の健康に関しては,うつ病の知識について65〜69歳が他年齢層より低いという結果が出た。自殺につ いては,「仕方がない」と答えた人が29人(5 . 5%)あり,容認もしくは肯定的な考えもみられた。今回,採用した 精神的健康度WHO-5(The World Health Organization-Five Well-Being Index)では,年齢層では50〜54歳代, 職業別では会社員,また相談したいが相手先が「わからない・相手がいない」の回答者ほど健康度が低いという結 果であった。その要因としてストレスやサポート,経済問題とが関連しているとみられた。
 以上のことから,自殺予防のなかの一次予防として,飲酒や喫煙の生活習慣の見直しや「うつ病の知識」の啓発 運動を進めていくこと,また,相談やサポートについての体制づくりの必要が考えられる。現在,医療班と役場の 健康づくり班,あさぎり町社会福祉協議会の共同で「うつ病と自殺に関する講演会」等を開催し対話型健康出前塾 で自由に話せる雰囲気づくりとともに住民のメンタルヘルスリテラシーの向上を図っているところである。また, 今回の調査では,「自由記載欄」を設けたが,地域づくりに関する多様なアイデアが記載され住民のメンタルヘル スへの関心の高さが示された。今後,エスノグラフィック的なアプローチで地域性を活かした風土に根ざした地域 包括的ヘルスプロモーションの展開が期待される。

著者関連情報
© 2010 著者(問い合わせ先は日本精神衛生学会)
前の記事 次の記事
feedback
Top