こころの健康
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慢性疾患児や障害児をきょうだいに持つ高校生のきょうだい関係と心理社会的適応
性や出生順位による影響を考慮して
槙野 葉月大嶋 巌
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2003 年 18 巻 2 号 p. 29-40

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抄録

[背景]子どもの慢性疾患や障害が, その健常なきょうだいにも影響を与えることが指摘されている。しかし国内ではそうしたきょうだいの適応に関する大規模な研究は少なく, 高校生を対象とするものもない。[目的]慢性疾患児・障害児をきょうだいに持つ高校生 (以下きょうだい障害児群) のきょうだい関係や心理社会的適応を, きょうだい全員が健常児の高校生 (以下きょうだい健常児群) や一人っ子群と比較する。また性や出生順位の影響も合わせて検討する。[方法]首都圏公立高校に在籍する2349人に無記名自記式調査票を配布し2136票の回収を得た (有効回収率90.4%)。解析対象にした1年生1561人のうちきょうだい障害児群は70人 (5.0%) であった。質問紙はきょうだい関係及び家族関係11項目と, ソーシャルサポート及びストレスコーピング, 心理的適応として精神健康度 (GHQ-30), 不安に関する4項目, 社会的適応として, 子どもの行動チェックリスト自記式日本語版を用いた。[結果]きょうだい障害児群は友人関係に否定的影響を感じていたが, きょうだいへの自責感, 将来への心配, 肯定的な関係を意識していた。ソーシャルサポートやコーピングには差は無く, 社会的適応の面では友人との仲や親との関係, 攻撃的行動や思考や社会性の問題できょうだい障害児群ときょうだい健常児群に差はなかった。きょうだい障害児群は差別を受ける不安や精神健康度の悪さ, 非行的行動や不安・抑うつ・引きこもりを反映する行動を多く示していた。性や出生順位を合わせて検討すると, 障害児の年少きょうだいに精神健康度の不良なものが多く, 障害児の男きょうだいは兄弟姉妹との不仲, 精神健康度の悪さ, 不安・抑うつ・引きこもりを反映する行動のいずれも有意に多く見られた。[結論]障害児をきょうだいに持つ高校生は, メンタルヘルスに問題を抱える者が多く, 配慮ある対応の必要性が示唆された。

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© 日本精神衛生学会
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