こころの健康
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子育て支援における相談員の意義
A子育て支援機関の現状から見た相談員の実態調査
大辻 隆夫塩川 真理阿部 彩
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2004 年 19 巻 2 号 p. 86-95

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抄録

本研究の目的は, 今後の子育て支援における, 一機関の相談員のあるべき姿について相談員経験者及び関係者による討議にもとづき, わが国の子育て支援の一端について現状分析し, 今後の子育て支援に有用な示唆を得ようとするものである。Aセンター相談員経験者5名, ワーカー経験者1名, 及び次年度相談員採用予定者1名, 合計8名を対象に, (1)「Aセソター相談員の意義について」自由記述法によるアンケート調査を行い, (2) その資料にもとづく自由討議法による討議を行った。これらの討議内容を分析した結果, 以下の知見を得た。I相談員の意義として, (1) 相談員に対する地域の高いニーズ: 相談件数に減少はなく, 最近の少子化傾向を考慮すればむしろ増加とみなせる。(2) 相談員に求められる高い専門性: 専門家としての相談員へのカウンセリンダニーズが増加してきている。(3) カウンセリングの啓蒙: 職場等の関係職員の子育て支援意識の向上に伴い, 相談員の専門性としてカウンセリングを位置づけるようになった。II相談員の処遇に関する問題点として, (1) 採用: Aセンターの相談員採用人事における採用側の相談員の専門性に対する意識は低く, 機構改革後も変化が見られない。(2) 報酬: 低い報酬。例えばスクールカウンセラー1日分 (8時間) の報酬が相談員4.8日分の報酬に相当する。(3) 研修: 研修の講師として安易に上位組織の職員を選択するため, 専門性においては臨床心理士を含む研修者の方が力量的に上位にあることが多い。この意味で, Aセンター相談員の意義は, 市民サービスという点から言えばきわめて重要であるが, 雇用者側の相談員の採用における意識の低い現状においてその専門性を生かすには大いに疑義があるといえる。

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© 日本精神衛生学会
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