こころの健康
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書記的カウンセリングの一方法としての感情表出法の考察
心理アセスメントの可能性に注目して
池田 なをみ
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2006 年 21 巻 2 号 p. 62-71

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抄録

従来から, 学生相談では言語的カウソセリングを中心とした支援活動が行なわれているが, 来室する学生の中に, 言語表現への苦手意識から対人関係に悩み, 抑うつ感を強めている学生は少なくない。本研究は, 学生相談において, 「話すことが苦手なので」と訴える学生に書記的カウンセリング技法として考案した感情表出法 (Method for Emotional Expression) を適用した事例である。「書いていたら, こんなに一杯あって自分でもビックリした」と感想を述べたように, カードに「エピソードと気分」を記入する作業が, Cl自身気づいていない内的世界の表出を促す結果となった。学生の感情表出の変容過程を概観し, 言語表現への苦手意識の緩和だけでなく, 対人関係の広がりや抑うつ感の軽減について考察した。
また, カードの分析を試みることで, 学生の内的世界を理解し, その状態像の変化を把握する, 心理アセスメントへの可能性について検討した。心理療法を継続する過程で, Clのその時々の状態像をアセスメントすることは, その後の治療方針を検討する上で重要である。今後, 更に実践例を重ね, 心理アセスメントへの活用の可能性を確認していきたい。

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© 日本精神衛生学会
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