抄録
肺移植患者は様々な要因から感染症を発症する。感染症は移植臓器(グラフト)に生じやすく,グラフト機能不全はレシピエントにとって致命的となりえることから,移植医療では予防投与が幅広く行われている。一方,肺移植において,感染症治療のアプローチも様々である。周術期や感染症を発症するリスクが極めて高い状況下では先行治療を行うことも多く,グラフトへの感染では起炎病原体が確定するまでの初期治療も広域かつ複数の抗菌化学療法を使用することもある。また,確定的治療は抗菌薬投与期間もグラフト機能が改善するまで継続するなど,日常診療とは異なる対応も多い。ここでは肺移植に用いられる抗菌化学療法について記載するが,移植施設により抗菌化学療法プロトコールは異なる。そのため,本連載では東北大学病院またはトロント総合病院の使用例を提示しながら解説する。