抄録
肺移植レシピエントは,移植前より有する基礎疾患のほか,移植後は免疫抑制薬を生涯にわたり服用するため,基礎疾患の進行や薬剤の副作用により慢性期にも様々な合併症を発症する。移植肺(グラフト)機能維持のため,それら副作用や合併症を認めても原因となる免疫抑制薬の減量をせず,薬物療法で対応することが多い。そのため,肺移植レシピエントは多くの薬剤を服用することになるので,薬物療法の必要性,治療目標,副作用について十分に理解する必要がある。薬物療法は,移植レシピエントも非移植患者も治療目標は同じであるものの,薬剤選択においては,①免疫抑制薬や感染症予防薬との相互作用を考慮すること,②副作用が出やすいため少量から開始すること,③腎機能に応じた投与量の調整が必要であることに注意する。ここでは,肺移植レシピエントの慢性期に多く認められる高血圧,脂質異常症,糖尿病,骨粗鬆症,慢性腎臓病について解説する。