蚕糸・昆虫バイオテック
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特集「カイコ突然変異体の原因遺伝子の単離とその利用について考える」
特集:「カイコ突然変異体の原因遺伝子の単離とその利用について考える」にあたって
伊藤 克彦
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2022 年 91 巻 2 号 p. 2_071-2_074

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抄録

 言うまでもなく,カイコは遺伝学の研究対象として古くから利用されてきた昆虫種であり,その長い研究の歴史から,数百を超える突然変異体が発見および作出され,維持されている。これらは生物学上,貴重な遺伝資源であるとともに,カイコが優れた研究材料であることを示している。加えてカイコは,日本にとって長い養蚕の歴史から馴染み深い有用昆虫であるだけではなく,農業害虫の中で最も重要なグループであるチョウ目昆虫のモデルとしての側面をもつ。そのため,カイコにおけるゲノム研究は,基礎研究上のみならず農業上重要な研究課題の一つであったと考えられる。

 日本におけるカイコのゲノム研究は,1990年代後半から精力的に進められてきた。そして,2000年にカイコにおける形質転換体の作出法が確立され(Tamura et al 2000),さらに2004年にカイコのゲノム情報が公開された(Mita et al 2004)。これらの技術や情報を利用して,その後,カイコの突然変異体の解析が進められ,数多くの原因遺伝子が単離・同定されている。筆者もこれまで長くカイコのゲノム研究に携わり,いくつかの突然変異体の原因遺伝子を明らかにしてきた。現在,このカイコのゲノム研究の進展からもう 20 年近くが経とうとしている。

 今回,この約20年という時期に蚕糸・昆虫バイオテックで特集を取りまとめる機会をいただき,「カイコ突然変異体の原因遺伝子の単離とその利用について考える」というテーマで特集号を企画した。本特集号では,カイコの突然変異体解析の第一線にいる5名の研究者に,これまでに解析した突然変異体とその原因遺伝子についての紹介とともに,その単離した遺伝子を利用した今後の研究への展開について述べていただく。本特集に先立ち,序章として本稿ではまず,カイコにおけるゲノム研究がどのように展開していったのかの概略について述べる。続いて,そのゲノム研究の発展により,現在までに明らかになったカイコの突然変異体について紹介したい。

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© 2022 社団法人 日本蚕糸学会
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