昆蟲.ニューシリーズ
Online ISSN : 2432-0269
Print ISSN : 1343-8794
〈原著論文〉
千葉県に自生する6種のランを加害するハモグリバエ科の同定と被害状況
菅 みゆき福島 成樹山下 由美遊川 知久徳田 誠辻田 有紀
著者情報
ジャーナル フリー

2018 年 21 巻 3 号 p. 167-174

詳細
抄録

千葉県山武市の調査地においてラン科植物を食害するハエ類の調査を行った.まず,植物の種によって加害するハエの種が異なるかどうかを検証するため,6種のランより果実や花茎を採集し,内部に寄生するハエ類を比較した.次に,季節によってハエの種が異なる可能性を検証するため,ランの開花時期である春(5月)から夏(7月)にかけて採集されたハエ類の比較を行った.クマガイソウより得られた成虫標本は,ランミモグリバエと同定された.また,ミトコンドリアDNAのCOI遺伝子領域の配列を用いた分子同定の結果,様々なランより5~7月にかけて採集されたハモグリバエサンプルの配列は,ランミモグリバエの配列とほぼ一致した.このことから,本調査地ではランミモグリバエが様々なランを食害しており,季節によりハエの種に変化はないと考えられた.また,本研究では3種のランについて果実内に見られたハエの発育段階を約2週間おきに観察し,幼虫および囲蛹期間の推移状況を明らかにした.キンランとクマガイソウ果実の被害が大きく,個体群維持のため,ランミモグリバエの防除が必要であると考えられた.

著者関連情報
© 2018 日本昆虫学会
前の記事 次の記事
feedback
Top