昆蟲.ニューシリーズ
Online ISSN : 2432-0269
Print ISSN : 1343-8794
タイワンキチョウはどうして集団で蛹化するか
榊原 充隆
著者情報
ジャーナル フリー

2004 年 7 巻 2 号 p. 73-78

詳細
抄録

タイワンキチョウEurema blanda arsakia(Fruhstorfer)の,路上に植栽されたモクセンナCassia surattensisにおける蛹化を沖縄県石垣島で観察した.幼虫は顕著な集合性を示した.終齢幼虫は蛹化直前になると寄主植物の先端部を目指して歩行し,また物理的干渉に対しては振動するという反応を示した.幼虫期の集合性,蛹化前期の背地性と個体間の干渉行動によって,幼虫はほぼ均一な間隔を保って蛹化することになった.褐色の蛹が鈴なりになったモクセンナの頂部は別グループの植物の果実が成っているように見えた.蛹化後約1週間で,ほぼ全ての個体が鳥類などに捕食されることなく羽化した.終齢幼虫をハリクチブトカメムシEocanthecona furcellataに与えた場合,本種を他の鱗翅目昆虫より選好したことから,本種にはさほど毒性はなく,鳥類も捕食可能であると推察した.本種の蛹集団が植物の果実や枯れ葉に集団擬態し,鳥類からの捕食を回避している可能性について考察した.

著者関連情報
© 2004 日本昆虫学会
前の記事 次の記事
feedback
Top