1940 年 11 巻 4 号 p. 227-234
家蠶の5齢初期の幼蟲に同一程度に發育した他の個體より1個の卵巣をとり之を移植した。其の結果移植卵巣と宿主卵巣の發育に關して次の如き關係が見出された。一般に移植された卵巣も宿主の卵巣も共に其の完全な發育を阻害せられる。但し移植された卵巣の發育が悪い場合だは宿主の卵巣は良く發育して正常に近くなり、反對に移植卵巣の良く發育した場合には宿主の卵巣の發育は著しく妨げられる。然し移植及び宿主の兩卵巣から發育した總卵數は略宿主本來の卵數に近くなる。以上の現象は蠶體内に於て成熟卵を作る榮養物質が略一定量であるといふことを暗示する。