日本蚕糸学雑誌
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家蠶卵殼層の厚さに就て
布目 順郎
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1950 年 19 巻 4 号 p. 315-322

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抄録

(1) 小石丸, 乞食, 四川三眠, 大造, ヂヤロアスコリの5品種の卵を縱, 横, 水平に夫々眞中から切断し, その断面上25箇所を定めて (第1図参照) その各箇所に於ける卵殼層の厚さを測定した。測定は簡便な方法で行つた。
(2) 卵殼の部位による厚さの相違は大要次の如くである。
精孔部>卵の中央部と曲率半徑の大きな側 (第1図のI又はWの側) との中間部位>卵の中央部>卵の中央部と曲率半徑の小さな側 (第1図のM又はSの側) との中間部位及び卵の中央部と精孔部との中間部位>卵の中央部と精孔の反対側との中間部位>曲率半徑の大きな側 (第1図のI又はWの側)>曲率半徑の小さな側 (第1図のM又はSの側)>精孔の反対側>精孔側菊花状斑紋の周囲
(3) 精孔部位に於ける厚さを最も薄い部位に比較すると約2倍である。
(4) 孵化の時に喰い破られる箇所は最も薄い範囲に属する部位である。
(5) 精孔部とそり反対の部位に於ける厚さの大小関係は品種により (少く共第1表に掲げた5品種に於ては) 特徴があるようである。
(6) 日支歐及び交雜種の20品種に就て卵殼層の厚さを比較すれば歐洲種及び交雜種に於て最大値を, 支2化に於て最小値を示す。日1化, 日2化及び支1化の場合はその中間である。
(7) 個々の品種に就てはトルコ黄繭が最大値を示し, 歐洲種以外のものでは綿蠶, 山東三眠の如きは歐洲種程度の厚さを示し, 最小値を示すものは浙江, 大造, 支108等である。
(8) 化性との関係は, 支1化>支2化, なる関係が見られるが日本種の場合は明瞭でない。
(9) 卵の中央部位 (Gの部位) に於ける厚さと卵の長径及び短径とり間には可成りの相関々係があり, 殊に短径との間の相関々係の方が大きい。

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