日本蚕糸学雑誌
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越冬中の柞蠶蛹に対する低温接触かその発蛾に及ぼす影響
倉沢 美徳小山 長雄
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1950 年 19 巻 4 号 p. 352-357

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抄録

本実驗は柞蠶Anthereae pernyi GUÉRINの越冬蛹を用いて, 1月, 2月, 3月及び4月の各期に0℃--20℃ 迄の低温接触を一定時間行い, その発蛾に及ぼす影響を究明したものである。実驗結果は次の如く要約せられる。
1) 低温接触を1月, 2月及び3月に行つたものでは, -15℃ 迄は影響なく, 影響の認められるのは-20℃ 3時間接触以上で, 4月では-15℃6時間接触からである。
2) 発蛾歩合から越冬蛹の耐寒性を見ると, 2月が最も強く, 3月, 1月之に次ぎ, 4月が最も弱い。
3) 発蟻能力失墜最小時間は, 1月は-20℃ 8時間内外, 2月は-20℃9-10時間, 3月は-20℃7-8時間, 4月は-15℃ 8-9時間と推定せられる。從つて果実蠅に比して極めて強い耐寒性を有する。
4) 雄は雌に比して耐寒性が強い。然し蛹が活性化する頃は雄の方が弱くなる傾向があるが, 之は雄の発育が早いため, 低温の影響を受け易い状態におかれることに起因すると考えられる。4月の低温接触には不展翅蛾が多いが, 雄は雌よりもその数が多いことからも想像せられる。
5) 低温接触は不展翅蛾数 (4月を除く) 発蛾期間及び平均1蛾産卵数に対して影響を及ぼさない。
6) 柞蠶種繭の冬期間の保護場所は, 発蛾を調節する必要がなければ, 一般室内で充分である。但し野外に放置したものは全死した。

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