日本蚕糸学雑誌
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家蚕の皮膚色素に関する研究
(IV) 数種の内皮色素の組織学的観察
川瀬 茂実
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1956 年 25 巻 5 号 p. 327-332

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抄録

家蚕幼虫の数種の内皮色素の組織学的な調査を行い, 併せてそれら色素間の分布, 共存関係等について調べた。
1) 形蚕 (+p) 等の眼状紋部にみられる赤色色素は, 大さ0.1-0.3μ の色素粒として真皮細胞の上辺 (外皮側) にのみ分布する。
2) 黒縞 (ps), 虎蚕 (Ze) 等に出現する気門上線白条部, 腹脚基部の赤色色素も, 眼状紋部のそれと等しく0.1-0.3μ で真皮細胞の上辺に分布する。
3)「かすり」(+pq) の赤色色素は, 真皮細胞の基底部に0.2-0.6の暗赤色の粒状顆粒として分布する。
4) 黄体色蚕 (lem) の黄色色素はxanthopterin-Bであるが, これは極めて微細な色素粒として真皮細胞の上辺に濃厚に分布し, 基底部には少ない。また黄体色蚕の眼状紋部に出現する赤色色素と黄色色素との関係は, 最上辺に赤色色素が, 次に黄色色素が分布し比較的判然と分布の域を異にする。
5) 日1号, 日122号の眼状紋部の赤色色素部には, 真皮細胞の上辺に赤色色素のみが分布し, 他の部分に存在する赤体色色素 (基底部に存在する) はこの部分には存在しない。つまり両色素は同一細胞には共存しない。

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