一般に使用されている煮繭各区の温度, 時間ならびに繰糸湯温度を因子にとり計画された要因実験の綜合結果から, 繭糸各部位の落緒確率を考察し次のことを知つた。
1.繭糸部位別の落緒確率の変化は原料によりそれぞれ特徴ある形態を示すが, その型は大略L, U, Jの3種に分類された。
2.同一の要因実験を各原料毎に実施して新繭緒糸量, 蛹襯量の変化を考察した結果, 最外層落緒の多い原料は新繭緒糸少なく, また最内層落緒が多い原料は蛹襯量の多い傾向を認めた。
3.これは繭層の膠着抵抗が原料によつて異なることが大きい原因と考えたが, それと共に最外, 内層部分繭糸の除去に伴う分布型の変動性の影響もまた大きいと考えた。
4.以上のこと, 分布型相互の共有性からして, 繭糸上の落緒確率を示す分布型は本質的にはU字型を示すと考えた。
5.繭糸内各部分の落緒生起の状態は一様に等しいこと仮定して1粒に生じる落緒数がPoissno分布に従うことを導いたが, これは前項の結果から満足されない。しかし原料毎に固有の分布が存在するという仮定におきかえても, Poisson分布の導かれることを確めた。
6.しかし実質的には, 落緒が処理あるいは操作らの影響を鋭敏にうけやすい最外, 内層において落緒確率の多い特性を示すことは, その事象が稀現象であること相俟つて実験結果の客観性を乱し, 更に1粒の落緒回数の性質をPoisson分布型から一般Poisson型え変化させる主要な要因をなしていると考えられた。このことはまた最外, 内層落緒の規定ならびにその管理を厳しくすることが実験結果の客観性を保つた上に必須の事柄であることを示すものと解釈することができる。
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