日本蚕糸学雑誌
Online ISSN : 1884-796X
Print ISSN : 0037-2455
ISSN-L : 0037-2455
家蚕幼虫体液からL-シスタチオニンの単離
近藤 義和
著者情報
ジャーナル フリー

1959 年 28 巻 1 号 p. 1-9

詳細
抄録

家蚕幼虫体液1.5lから塩酸処理アルミナカラムクロマトグラフィーおよび Dowex 50カラムクロマトグラフィーにより硫黄含有アミノ酸1.2gを得た。このものはつぎの実験からL-シスタチオニンと決定した。
1. このアミノ酸はロ紙上でK2PtI6を脱色するので硫黄は2価結合である。ニトロプルシッド反応はアルカリ性下NaCNの存否にかかおらず陰性であり, また硫化鉛反応も陰性であつたのでモノサルファイド基として存在している。元素分析の結果から硫黄はアミノ酸1分子に対し1原子であつた。
2. 全窒素 (DUMAS法) とα-アミノ態窒素 (バンスライク法) が等しいので, 窒素は全部α-位にアミノ基として存在している。元素分析の結果は硫黄1原子に対し窒素2原子の割合であつた。
3. ラネーニッケル触媒還元によりこのアミノ酸は脱硫され, 等モルのアラニンとα-アミノ正酪酸が生成する。
4. ベンゾイル化によりジベンゾイル誘導体が得られ, ジベンゾイル-L-シスタチオニンとの混融により融点降下が認められなかつた。
5. 旋光度 (文献値), 赤外スペクトル, ペーパークロマトグラフィーのRf値, イオン交換樹脂カラムグロマトグラフィーの溶出位置などいずれも合成L-シスタチオニンと一致した。

著者関連情報
© 社団法人日本蚕糸学会
次の記事
feedback
Top