日本蚕糸学雑誌
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家蚕における原種と交雑種との間の低温処理による多角体病誘発率の差異
有賀 久雄渡部 仁
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1959 年 28 巻 5 号 p. 302-307

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抄録

中腸型多角体病抵抗性, 感受性等の数品種を用い, それらの原種と交雑種とにつき, 5令起蚕低温処理による2種多角体病すなわち膿病 (N) と中腸型多角体病 (C) 発生の程度を比較検討した。
(1) 無処理区においては, 交雑F1は両親原種よりも膿病蚕 (併発型を含む) および中腸型多角体病蚕 (併発型を含む) の発生が少ない。すなわちF1は雑種強勢によつて, 両種多角体病に対して抵抗力が増大する。
(2) 中腸型多角体病に対しての抵抗性品種間の交雑F1よりも, 感受性品種間の交雑F1のほうがこの強勢の程度が強く現われる傾向が認められる。
(3) 交雑F1はその両親原種よりも, 低温処理 (5令起蚕, 5℃, 24時間) によつて誘発される膿病蚕 (併発型を含む) の数が多い。しかも比較的抵抗力の強い品種間の交雑F1において, 誘発される多角体病が多い傾向がある。
(4) 中腸型多角体病 (併発型を含む) についてみると, 春蚕期では上記膿病の場合に似ているが, 夏蚕および晩秋蚕期では交雑F1の低温による誘発率は, ほぼ両親原種のそれの中間の値を示す。
(5) 低温処理による多角体病誘発率の低いものが, 無処理の場合にも多角体病発生率が低いとはいえないように考えられる。

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