日本蚕糸学雑誌
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桑の炭水化物に関する研究
桑条の低温処理によるラフイノースおよびスタキオースの出現
柏田 豊
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1961 年 30 巻 3 号 p. 211-216

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抄録

本概究は晩秋期における, ラフィノースおよびスタキオースの早い出現に対しては, その時期の低温遭遇が誘因であるという考察を実証するため, 2つの低温処理実験を行った. 条または葉を低温処理することにより人為的に両糖を出現せしめることが可能であることを明らかにしたが, その概要は次のとおりである.
1) 晩秋期10月に7品種の条を2~6℃, 13℃に一定時間, 1, 2回変温処理することにより, 自然環境下のものよりもラフィノースおよびスタキオースの出現を早めることができる.
2) 出現の早まりは2回処理の方が大きく, 時期の遅いものほど出現しやすく, また早生型品種が晩生型品種よりも出現しやすい傾向がみられる.
3) 以上の結果から, 晩秋期におけるラフィノースおよびスタキオースの出現の早いことに対してはこの時期の低温遭遇が誘因であるという考察の正しいことが証明された.
4) マルトースの量は低温処理によって増加する. この糖の量的な増減は寒さと正の関係にあることがうかがわれる.
5) 自然環境でラフィノースおよびスタキオースの出現と全く関係のない活動旺盛期の6月の条と葉を水挿状態で0℃ および5℃ に連続冷蔵処理すると, 5日または10日後からラフィノースおよびスタキオースが出現し始める.
6) 両糖出現の順位はラフィノースが先で, また条木質部が皮部より早く, 既述の結果に合致する. フラクトースは水挿条である関係上増加しない.
7) いずれの時期の材料でも低温処理することによって随時ラフィノースおよびスタキオースを出現させることができるが, 活動旺盛期の材料では強い処理条件を必要とする.

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