日本蚕糸学雑誌
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クワ苗の葉位別耐乾燥性に関する研究
牛島 忠広
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1961 年 30 巻 6 号 p. 469-474

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抄録

この研究は1954年以来田崎らによってはじめられたクワの水経済と乾物生産の研究の一環として, 両者の関係を明らかにする第一歩として企画されたが, 未解決の部分が多くのこされた. 実験は2つの部分からなっている.
(1) 発芽後40日ごろの6~7枚開葉したクワ苗を7月20日に地表下3cmのところで主根を切断し, 乾燥にしたがって葉含水量を測定した結果, 下位の葉から枯れはじめしだいに上位へ進んだが, 致死含水量以下にならない範囲では夜間には相当回復し, 午後にはしおれがひどくなるという現象をくりかえす. この時期の葉の光合成能力は2, 3葉位だけが5mg CO2/50cm2/hr以上で他より圧倒的に多いことから, これらの葉が乾燥に強いことは物質生産の維持に大いに役立つことになる. 下位の葉が上位より枯れやすい原因は, 致死飽差が少ないことと浸透圧が低いことによると考えられる.
(2) 2年生の実生苗を夏切り後, 約20枚開葉した高さ60-70cmのものを鉢植えのまま給水を断った結果, 下位の葉はやはり枯れやすかったが, 上位の最も生産活動のさかんな葉位に極端なしおれが現われた. この時期の下位の葉は気孔閉鎖能力を持たない“dull leaf”であり, そのため非常に乾燥しやすい性質があるが, 上位の異常な現象は浸透圧・蒸散量・致死飽差などから考えてもなっとくのいかないままであった. 秋になるとすべての葉が“dull leaf”となり, 含水量のへりかたにも差がなくなることがわかった.

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