日本蚕糸学雑誌
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家蚕の中腸円筒細胞の核内に多角体を形成するウイルス病, 中腸核多角体病について
田中 茂男清水 孝夫有賀 久雄
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1967 年 36 巻 1 号 p. 1-9

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抄録

家蚕の中腸円筒細胞核に正6面体の大形の多角体を形成するウイルス病を発見し, 本病を中腸核多角体病とよんだ。
本病のウイルスは経口接種および経皮接種のいずれの場合でも, 罹病蚕の中腸以外の組織, 器官では多角体形成がみられなかった。
本病におかされた中腸被膜組織で観察された多角体は, 最小3.5μ, 最大20.7μと非常に大形であり, 1細胞核中に1~4個形成される場合が多かった。この多角体は60℃で1N HClによる前処理で, ブロムフェノールブルー, オレンヂG, エオシンなどに好染した。またピロニン・メチルグリーン染色では, ピロニンに染まった。
ウイルスの電子顕微鏡的観察では, 球形のウイルス粒子がみられた。
本病ウイルスは各齢の幼虫に対し強い感染力を有し, 中腸プライの炉液の添食では5齢起蚕でLD50 (-log) は2.73を示した。また病蚕の排出糞も起病性のあることを明らかにした。なお本病蚕の中腸組織は, 細胞質多角体病におけるように白濁することがないため, 外部的病徴では軟化病蚕と誤認しやすいことを指摘した。

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