1968 年 37 巻 3 号 p. 201-206
家蚕の上蔟時の温湿度条件とその毛羽中層部分フィブロインの紫外線照射による強伸度変化およびフィブロイン表面に見られる特異陥没現象との関係について考察を行った。
1. 強伸度の変化
(1) 未照射試料の強伸度は, 標準条件下で上蔟せしめた家蚕絹フィブロインが最も大きく, 同条件下で上蔟せしめた家蚕繭の毛羽中層部分フィブロインがこれに次ぎ, 高温多湿条件下で上蔟せしめた家蚕繭の毛羽中層部分フィブロインが最も小さい。
(2) 紫外線100時間照射により標準条件下で上蔟せしめた家蚕絹フィブロインは強度約1/10, 伸度約1/4低下するが, 毛羽中層部分フィブロインはいずれも脆化甚しく測定不能である。
2. フィブロイン表面に見られる特異陥没現象について
いずれも光脆化作用特有の陥没現象が観察されるが, 高温多湿条件下で上蔟せしめた家蚕繭の毛羽中層部分フィブロインにおいて特に顕著に出現し, 標準条件下に上蔟せしめた家蚕繭の毛羽中層部分フィブロイン, 同条件下で上蔟せしめた家蚕絹フィブロインの順に軽微である。