1970 年 39 巻 1 号 p. 51-61
カイコの脂肪体の生理機能を細胞構造の面から解明するために, 幼虫期から蛹期にいたる脂肪体細胞の変化ならびに絶食時における変化を電子顕微鏡的に観察した。
1. 食桑期の脂肪体細胞には, 電子密度の高いいわゆるリピッド様小体が多数観察され, グリコゲン顆粒は細胞質の全域に分布している。粗面小胞体およびミトコンドリアもこの時期に観察される。
2. 絶食期の脂肪体細胞においては, リピッド様小体は減少し, その電子密底も低下する。グリコゲン顆粒もまた減少し, 細胞質の各所にグリコゲン域を形成する。
3. 熟蚕期においては, 多数のリピッド様小体が観察されるが, その電子密度は低下し, グリコゲン顆粒は食桑期に比し減少している。
4. 蛹化直後の脂肪体細胞においては, リピッド様小体は, (1) 不定形で電子密度の高いもの, (2) 不定形で電子密度の低いもの, および (3) 類球形で電子密度の高いものの3種類が観察された。類球形の電子密度の高いリピッド様小体内にはグリコゲン顆粒が観察される。粗面小胞体およびミトコンドリアはともに減少している。また幼虫期に観察されなかったところのミエリン様の小体とグリコゲン顆粒の集合体が認められた。
5. 脂肪体細胞内のリピッド様小体とグリコゲン顆粒は, 蛹期中において密接な関係があるものと考察した。