蚕に寄生性を有する
Aspergillus属菌のホルムアルデヒドに対する抵抗性を調べ, 抵抗性発達の成因や耐性株の形態, 生理的性状の変動と病原性の変化などについて検索して次の結果を得た。
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Aspergillus属菌はホルムアルデヒドに接触するとそれに対して抵抗性を獲得するか, その抵抗性を発達する。
2 この抵抗性菌株は接触する薬剤の濃度によって, 形態や生理的性状を変動すると同時に病原性にも変化を生じた。
3 菌の生理的性状のうちコウジ酸産生能, 色素産生能および蛋白質分解能は薬剤に接触するとその産生能に変化を生じ, これと同時に蚕に対する病原性にも強化や弱化が起こった。
4 色素産生能, 蛋白質分解能およびコウジ酸産生能と病原性は接触薬剤濃度と密接な関連を示した。すなわち一般に薬剤濃度が稀薄な場合はこれらの力価が低下し, 濃度が高くなるに従って漸次増加し, ついに最高の水準に達する。さらにこの限界濃度を超えると逆にその産生力や病原性が低下した。
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Aspergillus属菌のホルムアルデヒドに対する薬剤抵抗性は菌系, 菌株によって相達する。この菌種の差異は分生胞子表面性状と密接な関連を示した。とくに黄緑色系 (主として
A. flavus-oryzae系) の菌種では胞子表面が粒状のものが最も抵抗性の発達が速やかで, しかもその到達した抵抗性の水準が高いが, 粗粒状, 平滑および小突起状を呈する菌種では抵抗性の発達がきわめて徐々で, 抵抗性の水準もきわめて低い。これらの系統株では抵抗性は全く発達しない菌株も多く認められた。
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