日本蚕糸学雑誌
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39 巻, 1 号
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  • (II) 浸せき浴残液の電気比抵抗による測定結果および繭層と生糸との比較について
    渡瀬 久也
    1970 年 39 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 1970/02/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    繰糸能率に最も大きな影響を与える要因の一つとして繭解じょがあるが, それに関連して, いくつかの乾燥条件によって生繭を乾燥したのちの繭層の塩酸吸着量, 湿度を異にした場合の乾燥後の繭層の水分吸着量, および乾熱処理条件を異にした場合の生糸の塩酸吸着量について実験を行なった。塩酸吸着量は浸せき浴残液の電気比抵抗によって相対的に求めた。
    大要次のような結果を得た。
    1) 繭層の塩酸吸着量および塩酸吸着速度は, 外層が最も大きく, 以下内層, 中層の順であった。
    2) 繭層の水分吸着量は, 外層が最も大であった。
    3) 生糸の塩酸吸着量は, 処理時間より処理温度の寄与率が大であり, 処理温度が高くなるにしたがい塩酸吸着量は減少した。
    4) 生糸の塩酸吸着量は, 処理温度100℃および120℃においては, 処理時間が長くなるにしたがいわずかに増加したが, 140℃においては逆にわずかに減少した。
    5) 繭層および生糸0.5g当りのそれぞれの塩酸吸着量は繭層の方が大であった。
  • 西 寿巳
    1970 年 39 巻 1 号 p. 7-11
    発行日: 1970/02/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    UV照射フィブロイン中のエーリッヒ反応陽性物質を検討した結果, 次のことが明らかとなった。
    1. 照射フィブロインをバリタ分解したものの中, エーリッヒ陽性物質としてインドール酢酸が最も多く, 次にインドールプロピオン酸を生じる。この外少量の成分不明の陽性物質を生じる。前2者はフィブロイン中のトリプトファン残基から生成したものと考えられる。
    2. 遊離芳香族アミノ酸の光分解物中, エーリッヒ陽性物質としてトリプトファンからはトリプトアミン, チロシンとフェニルアラニンからは成分不明のエーリッヒ陽性物質を生じる。したがって遊離アミノ酸とペプチドではインドール化合物の生成機構が異るものと考えられる。
    3. フィブロインに類似化学構造の羊毛ケラチンからは, エーリッヒ陽性物質としてインドール酢酸よりもインドールプロピオン酸を多く生じる。
  • 桑原 昂, 筒井 亮毅, 渡辺 忠雄
    1970 年 39 巻 1 号 p. 12-17
    発行日: 1970/02/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    家蚕絹フィブロインの過酸化水素による酸化と紫外線による光脆化との相乗作用において, その強伸度および電子顕微鏡で観察される特異な陥沒現象が, どのように推移するかを究明した。
    (1) 過酸化水素と紫外線による酸化的相乗脆化において, 強力は過酸化水素酸化時間に比例して低下するが, 伸度の変化は僅少である。また微細構造各領域量変化についても, 準結晶領域量の増加, 結晶領域量の減少傾向は, 過酸化水素酸化時間に比例して顕著となることから脆化にともなって当然結晶領域量の崩壊も想定される。
    これらの現象は, 染料吸着量, 黄褐変着色度などの結果からも, 明らかに酸化的相乗作用に起因するものと考えられる。
    (2) 電子顕微鏡で観察される特異な陥沒現象との関係は, 過酸化水素酸化時間とともに, 多孔性軽石状から蜂巣状小陥陥沒へと変化し, ついには繊維軸方向の随所において切断, 陥沒する。
  • 桑原 昂
    1970 年 39 巻 1 号 p. 18-22
    発行日: 1970/02/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    希薄な酸で各時間処理した家蚕絹フィブロインについて, 光脆化による2~3の物性値と電子顕微鏡観察による特異陥没現象との関連についてしらべた。
    (1) 強力, 伸度およびその脆化率においては, 希薄な酸処理2~6時間までは除々に低下し, 8時間以降においてはむしろ除々に向上している。
    (2) 黄褐変着色度においては, 希薄な酸処理2~6時間は比例的に濃色となり, 8時間以降は淡色化してゆく傾向を示す。
    (3) 酸性, 塩基性染料吸着量においては, ほぼ希薄な酸処理時間に比例して低下してゆく。
    (4) 電子顕微鏡観察の結果, 表面構造に見られる特異陥没現象は, 希薄な酸処理2~4時間において最も甚しく, 6~10時間におよぶにしたがって遂次軽微となり特に12時間では極めて軽微もしくは殆んど見られないことが判明した。
  • 桑原 昂, 筒井 亮毅, 渡辺 忠雄
    1970 年 39 巻 1 号 p. 23-32
    発行日: 1970/02/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    希薄な酸で各時間処理したシンジユ蚕, エリ蚕, テン蚕およびサク蚕の4種の野蚕絹フィブロインについて, 過酸化水素による酸化作用と特異陥沒現象との関係を比較究明した。
    (1) 過酸化水素による酸化作用によって, 予めおこなった希薄な酸処理2~10時間において特異陥沒現象が発生するが, 4~6時間処理で最大となりこの処理時間を前後に遠ざかるにしたがって軽微となる。とくに10時間以降においては, 極めて軽微かまたは全く見られない傾向を示している。
    (2) このような現象は, 野蚕絹フィブロイン中のチロシンが非結晶領域, 準結晶領域に主在し, 結晶領域には存在しないか存在しても極く微量でしかも主鎖の大部分が化学的に安定なアラニン連鎖から成りたっていることによると考察した。
  • 小林 勝, 山口 定次郎
    1970 年 39 巻 1 号 p. 33-36
    発行日: 1970/02/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    カイコにNPVを接種した場合, その後の発病が内分泌生理的な影響を受けるか否かを検討した。供試品種に日124号×支124号を用い, 5齢起蚕および上蔟前期の幼虫にウイルスを接種して後, 前者はそのまま, 後者は吐糸開始後20~30時間目に, 結紮によって遊離腹部を作成し, 内分泌生理的な働きを制御するようにした。この材料蚕に, 昆虫ホルモンである inokosterone および ecdysterone をそれぞれ注射し, 滅菌水を注射したものを対照とし, 発病蚕数を調べ, その影響をt検定で比較したところ, つぎの結果を得た。
    1. 内分泌生理的に制御しない場合には, ウイルス接種後の発病におよぼすホルモンの注射による影響に有意差が認められなかった。
    2. 内分泌機能を制御した遊離腹部での実験では, 夏蚕期, 晩秋蚕期ともにウイルス接種後の発病にホルモン注射による明確な影響を認めた。すなわち, ウイルス接種後に昆虫ホルモンで人為的に化蛹させるような処理を施すと感染発病率を増すという結果をえたので, カイコのNPVの感染に対しては内分泌生理が関与しているものと考えられる。
  • 橋口 勉, 吉武 成美, 土屋 洋子
    1970 年 39 巻 1 号 p. 37-42
    発行日: 1970/02/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    1. 黒蛹系統であるBTと正常蛹色系統の伊達錦ならびに大造を材料として, その体液からプロフェノールオキシダーゼを分離, 精製するとともに, 皮膚からは活性化物質を抽出してプロフェノールオキシダーゼの活性化を行なった。その結果プロフェノールオキシダーゼに関しては, BTが活性が一番強く以下伊達錦>大造の順であった。一方活性化物質については, これと丁度逆で大造>伊達錦>BTの関係にあることが判明した。
    2. 精製したプロフェノールオキシダーゼを薄層電気泳動法で比較検討した結果, 黒蛹系統は正常系統に比し泳動性に差異が認められた。しかし庶糖密度勾配法ならびにシュリーレンパターンによる分析では三者間に顕著な差異は認められなかった。
    3. 皮膚から抽出した粗活性化物質をセフアデックスG200でゲル分劃して種々しらべた結果, 活性化物質には少なくともA, B2種類の成分が存在し, 黒蛹系統は正常系統に比して一般に活性化物質が量的に少ないが特にB成分が少ないことが判明した。そしてこれらの結果は電気泳動的にも確かめられた。
    4. 5令未期から化蛹3日目までの種々の時期における体液プロフェノールオキシダーゼの量的変化を電気泳動的に比較検討した結果, 吐糸終了期以後から化蛹直後までの期間において黒蛹となる個体と正常蛹色となる個体との間に顕著な差異が認められた。
    5. 以上の結果を黒蛹の発現に関与する3つの要因すなわち, bp遺伝子, 感温期の保護温度および黒蛹色決定ホルモンとの関連において考察を行なった。
  • 第1報 Aspergillus 属菌のホルムアルデヒドに対する抵抗性の発達
    西城 澄雄
    1970 年 39 巻 1 号 p. 43-50
    発行日: 1970/02/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    蚕に寄生性を有するAspergillus属菌のホルムアルデヒドに対する抵抗性を調べ, 抵抗性発達の成因や耐性株の形態, 生理的性状の変動と病原性の変化などについて検索して次の結果を得た。
    1 Aspergillus属菌はホルムアルデヒドに接触するとそれに対して抵抗性を獲得するか, その抵抗性を発達する。
    2 この抵抗性菌株は接触する薬剤の濃度によって, 形態や生理的性状を変動すると同時に病原性にも変化を生じた。
    3 菌の生理的性状のうちコウジ酸産生能, 色素産生能および蛋白質分解能は薬剤に接触するとその産生能に変化を生じ, これと同時に蚕に対する病原性にも強化や弱化が起こった。
    4 色素産生能, 蛋白質分解能およびコウジ酸産生能と病原性は接触薬剤濃度と密接な関連を示した。すなわち一般に薬剤濃度が稀薄な場合はこれらの力価が低下し, 濃度が高くなるに従って漸次増加し, ついに最高の水準に達する。さらにこの限界濃度を超えると逆にその産生力や病原性が低下した。
    5 Aspergillus属菌のホルムアルデヒドに対する薬剤抵抗性は菌系, 菌株によって相達する。この菌種の差異は分生胞子表面性状と密接な関連を示した。とくに黄緑色系 (主としてA. flavus-oryzae系) の菌種では胞子表面が粒状のものが最も抵抗性の発達が速やかで, しかもその到達した抵抗性の水準が高いが, 粗粒状, 平滑および小突起状を呈する菌種では抵抗性の発達がきわめて徐々で, 抵抗性の水準もきわめて低い。これらの系統株では抵抗性は全く発達しない菌株も多く認められた。
  • 森 精, 赤井 弘, 小林 勝利
    1970 年 39 巻 1 号 p. 51-61
    発行日: 1970/02/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    カイコの脂肪体の生理機能を細胞構造の面から解明するために, 幼虫期から蛹期にいたる脂肪体細胞の変化ならびに絶食時における変化を電子顕微鏡的に観察した。
    1. 食桑期の脂肪体細胞には, 電子密度の高いいわゆるリピッド様小体が多数観察され, グリコゲン顆粒は細胞質の全域に分布している。粗面小胞体およびミトコンドリアもこの時期に観察される。
    2. 絶食期の脂肪体細胞においては, リピッド様小体は減少し, その電子密底も低下する。グリコゲン顆粒もまた減少し, 細胞質の各所にグリコゲン域を形成する。
    3. 熟蚕期においては, 多数のリピッド様小体が観察されるが, その電子密度は低下し, グリコゲン顆粒は食桑期に比し減少している。
    4. 蛹化直後の脂肪体細胞においては, リピッド様小体は, (1) 不定形で電子密度の高いもの, (2) 不定形で電子密度の低いもの, および (3) 類球形で電子密度の高いものの3種類が観察された。類球形の電子密度の高いリピッド様小体内にはグリコゲン顆粒が観察される。粗面小胞体およびミトコンドリアはともに減少している。また幼虫期に観察されなかったところのミエリン様の小体とグリコゲン顆粒の集合体が認められた。
    5. 脂肪体細胞内のリピッド様小体とグリコゲン顆粒は, 蛹期中において密接な関係があるものと考察した。
  • 1970 年 39 巻 1 号 p. 62
    発行日: 1970/02/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    数種の昆虫糸状菌の酵素活性
    サスカチェワン地方の5種のコメツキムシ (鞘翅目) に対する黒きょう病菌の病原性
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