1972 年 41 巻 3 号 p. 197-201
スチレンの場合と同様, 絹繊維にMMAモノマーを紫外線照射 (主波長2537Å) することにより, グラフト重合を行なわせ, 得られた絹繊維について強伸度を測定し, さらに赤外線吸収スペクトルおよびアミノ酸組成の変化を検討した。
1. グラフト率: グラフト率はMMAモノマー濃度の増加につれ, また重合反応日数の増加にともない増加した。
2. 強度: MMAモノマー濃度0%の絹繊維が照射日数の増加にともなって低下するのに比較し, MMAグラフト絹繊維では, モノマー濃度の増加につれ上昇がみられた。
3. 伸度: MMAモノマー濃度0%の絹繊維が照射日数の増加につれ低下するのに比較し, 5%, 10%では多少増加する傾向が認められたが, 1%では, ほとんど変化は認められなかった。
4. 赤外線吸収スペクトルの結果からMMA処理した絹繊維では, MMAと絹繊維が反応していることが推定された。
5. アミノ酸分析の結果, MMAは絹繊維を構成しているアミノ酸のうち, 水酸基を有するチロシン, セリンにグラフトすることが推定された。