日本蚕糸学雑誌
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絹繊維のグラフト重合に関する研究 (III)
スチレンまたはメチルメタクリレートグラフト絹繊維の性状について
今丸 〓渡辺 忠雄阿久根 了
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1972 年 41 巻 3 号 p. 202-208

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抄録

スチレンあるいはMMAグラフト絹繊維の性状, 特に吸湿率, 染着性, ヤング率等について検討した。
1. 吸湿率: スチレングラフト, MMAグラフト絹繊維ともに, モノマー濃度の増加につれて吸湿率は低下した。モノマー濃度0%の絹繊維の吸湿率は, 対照区 (無処理の練絹), モノマー濃度1%, 5%, 10%のスチレンならびにMMAグラフト絹繊維の吸湿率より高い値を示した。MMAグラフト絹繊維はスチレングラフト絹繊維より高い吸湿率を示した。
2. 染着性: グラフト絹繊維の染着量におよぼす factor として, グラフト重合させるモノマーの種類 (スチレン, MMA), 染料の種類 (オレンジII, ダイアコットンスカイブルー6B, メチレンブルー), 紫外線照射による影響等を検討し, スチレン, MMAグラフト絹繊維ともに, モノマー濃度の増加につれて, 染着量が低下することを知った。オレンジIIの染着量は, 対照区と比べて紫外線照射により低下し, スチレン, MMAをグラフト重合することによりさらに低下した。ダイアコットンスカイブルー6Bの染着量は, 紫外線照射によって増大し, スチレンあるいはMMAをグラフト重合することにより一層増大するものもあつた。メチレンブルーの染着量は, 紫外線照射により増大し, またスチレングラフト重合により対照区よりも増大するが, MMAグラフト重合では対照区より減少した。
3. ヤング率: スチレン, MMAグラフト絹繊維ともに, モノマー濃度の増加につれてヤング率は低下した。また, モノマー濃度0%のものは最も低いヤング率を示した。

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