1975 年 44 巻 1 号 p. 33-38
(1) 5齢蚕の幼若ホルモン分泌期にECD給与を行ない, 超過脱皮を誘起してみたところ, 多数の中部糸腺の縊れが発現し, ECD給与量の多い程総れの発現率が高まった。したがって中部糸腺の縊れは, 前胸腺ホルモン過剰の超過脱皮誘起のホルモン環境下で生じ, 中部糸腺中区の皮膜細胞層が退化するために生じると考えられた。
(2) 1~4齢を低温飼育した5齢蚕に対するECD給与によって, 前部糸腺の肥大癒合が発現し, 同時に絹糸腺に異常の認められない典型的な不結繭蚕も多発した。そしてこの発現は, 吐糸蛹化誘起のホルモン環境が幼若ホルモンの分泌によって著しく乱されるためと考えられ, 前部糸腺の皮膜細胞が超過脱皮的に感作しているのも認められた。
(3) 吐糸蛹化誘起のホルモン環境が形成されつつある5齢後半期でのJH給与によっても典型的な不結繭蚕が多発し, 熟蚕期におけるJHとECDとの同時給与では前部糸腺の肥大異常が認められた。そしてこれらも超過脱皮的感作を前部糸腺に引き起こす様なホルモン環境異常によるものと考えられた。