日本蚕糸学雑誌
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細胞質多角体病蚕の中腸皮膜細胞における核内封入体の形成と飼育温度との関係
宮川 正通
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1975 年 44 巻 1 号 p. 26-32

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抄録

ウイルス接種後の飼育温度が, 細胞質多角体病蚕における円筒細胞の核内封入体形成におよぼす影響について調査し, 次の結果を得た。
1. ウイルス接種後の飼育温度が15~25℃の範囲においては, 飼育温度が低いほど核内封入体の形成細胞が高い頻度で見られ, 1細胞当りの封入体数も多かった。
2. 核内封入体の形成細胞は中腸中部から後部前半にかけて最も高い頻度で見られるが, 前部前端および後部末端の20~30個の細胞では認められなかった。また, 円筒細胞が脱落した部位に新生された細胞においても核内封入体の形成が認められたが, 盃状細胞の核では見られなかった。
3. 核内封入体の形状は形成初期は4角形6面体を呈するが, 時間の経過とともに外観8角形に見えるようになり, 最終的には外観6角形を呈した。
4. 一般に核内封入体の形成が顕著である低温飼育条件下では, 核内封入体の形成が細胞質多角体の形成に先行した。しかし, 25℃区においては両者はほぼ同時に形成される場合が多かった。
5. 核内封入体数の形成頻度, 形状, 形状の経時的変化, 封入体形成細胞の頻度等についてはウイルスの接種方法 (経口と経皮) および飼料の種類 (桑葉と人工飼料) による差は認められなかった。

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