日本蚕糸学雑誌
Online ISSN : 1884-796X
Print ISSN : 0037-2455
ISSN-L : 0037-2455
ウアバインによる家蚕の休眠性の変化 (続報)
非休眠卵産生蛹における休眠卵の発現
竹田 敏長谷川 金作
著者情報
ジャーナル フリー

1976 年 45 巻 4 号 p. 337-344

詳細
抄録

著者らは, 先きにある種の無機イオンの能動輸送の阻害剤であるウアバインを休眠卵産生蛹に注射し非休眠卵の産下されることを報告し, これは, ウアバインが中枢神経系に作用し, 休眠ホルモンの分泌を阻止した結果と推察した。ウアバインの作用をさらに追求するため, 非休眠卵産生蛹にウアバインを注射したところ, 前報とは反対に休眠卵が産下された。
1. 10~20n mole のウアバインを化蛹当日, 2, 3日目の多化性系統のN4の蛹に注射するとその蛾の産下卵には50%以上の休眠卵が発現した。化蛹5日目の蛹ではまったく休眠卵は得られなかった。
2. ウアバインの休眠卵産生効果は, N4に特異的にみられるものではなく, 他の品種の非休眠卵産生蛹でもみられた。
3. ウアバインの注射時期と産卵順序における休眠卵の出現との関係を調査した結果, ウアバインの休眠卵産生効果は, 直接的には卵発育と関係がないことがわかった。
4. ウアバインの休眠卵産生効果は, 化蛹当日に食道下神経節を除去した蛹では, まったく現われなかった。
5. 以上の結果, 非休眠卵産生蛹においてウアバインは食道下神経節からの休眠ホルモンの分泌と放出を促進させることが明らかになった。さらに, 休眠卵産生蛹におけるウアバインの非休眠卵産生効果との差異について論議した。

著者関連情報
© 社団法人日本蚕糸学会
前の記事 次の記事
feedback
Top