日本蚕糸学雑誌
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カイコの人工飼料に対する味覚と摂食
II. 摂食抑制要因
平尾 常男
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1978 年 47 巻 3 号 p. 186-192

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抄録

電気生理学的手法により, カイコの味覚パターンを指標として, 桑葉粉末, 脱脂大豆粉末を主成分とする人工飼料中に認められる摂食抑制要因, すなわち摂食促進性入力 (LS, LI細胞の活性) を抑制する酸および摂食抑制性入力 (R細胞の活性) を引き起こすと同時に前者のLS細胞を抑制する脱脂大豆粉末中のR細胞刺激物質等が, 幼虫の摂食反応および成育などにおよぼす影響について, 交雑種日124号×支124号を用いて検討を行い次のような結果を得た。
1. 飼料中のクエン酸添加量の減量と脱脂大豆粉末の70%エタノール洗浄処理によって, 対照の飼料に比し摂食促進性入力の抑制と摂食抑制性入力の活性とがかなり軽減され, 桑葉に対する味覚反応パターンにかなり近似したものとなった。
2. 摂食反応の観察から, 摂食抑制要因を除去した飼料と対照の飼料とを混合して給与した場合にカイコ幼虫は明らかに前者を選択する傾向がみられ, また単独給与においては, 摂食抑制要因の除去によって食下量増加の傾向がみられ, 特に起蚕餉食時の喰いつきにその傾向が強くあらわれた。
3. また全齢飼育において, 摂食抑制要因を除去した飼料給与の場合に, 経過日数の短縮, 体重および全繭重, 繭層重などに増加の傾向がみられた。
4. 以上の味覚反応と摂食反応とを同時に対比しつつ行った実験結果から, 飼料に対する摂食性を考える場合には, 飼料中の味覚性物質のバランスが重要であり, 摂食促進性入力の抑制や摂食抑制性入力の活性化との関係を考える必要があることを調強した。

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