日本蚕糸学雑誌
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カイコの濃核病ウイルスに対する感染抵抗性とその遺伝様式
渡部 仁前田 進
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1978 年 47 巻 3 号 p. 209-214

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抄録

濃核病ウイルスに対する抵抗性系統として支124号, 感受性系統として日124号を選び, それらの間で交雑F1, F2および戻し交雑の組合せを作成し供試した。3齢起蚕期に種々濃度のウイルスを接種し, 血清学的診断によって感染の有無を個体別に調べた。抵抗性系統では高濃度のウイルスを接種した場合でも感染個体は全く認められず, 顕著な抵抗力を示した。
感受性系統および各組合せで得られた接種ウイルス濃度 (対数) と感染率プロビットとの関係曲線の型を比較して抵抗性の遺伝様式を調べた。正逆交雑F1および感受性系統の戻し交雑では, 両者の関係は直線的であり, しかも感受性系統とほぼ等しい感染価 (IC50) を示した。一方抵抗性系統の戻し交雑および交雑F2では, 高濃度のウイルス接種においてそれぞれ感染率 (プロビット) が50%, 75%でプラトーをもつ曲線となり, 抵抗性系統の戻し交雑では抵抗性個体と感受性個体が1:1, 交雑F2では1:3に分離することが示唆された。
以上の結果から, 濃核病ウイルスに対する蚕の感染抵抗性は1対の劣性主遺伝子に支配されているものと推定された。

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