1978 年 47 巻 3 号 p. 201-208
家蚕の中腸トレハラーゼの活性および細胞内局在性を幼虫1~4齢期を通じ, また幼若ホルモン様物質および脱皮ホルモンを用いて, 変態時期を人為的に支配した場合について調査し, 変態期にみられた変動パターンと比較検討した。
その結果, 中腸トレハラーゼ活性は幼虫の発育経過に対して指数関数的に増大したが比活性はほぼ一定の範囲内にあった。またその活性の大半は顆粒分画に回収された。ホルモン処理によって変態の時間経過を人為的に調節した場合, 中腸トレハラーゼの活性および細胞内局在性は吐糸開始時期に依存して大きく変化した。
これらの事実から, 中腸トレハラーゼの細胞学的ならびに酵素化学的変動は変態に伴う特異的な現象であることが示され, この変動の機構の解明が中腸の変態現象の理解に有効であると考えられた。