日本蚕糸学雑誌
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カイコ未受精卵における母性mRNAの存在
藤井 博河口 豊
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1982 年 51 巻 6 号 p. 503-509

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抄録

カイコの産下後の卵では初期発生に際し, 胚盤形成期と, ダルマ形胚子期から反転期に亘る時期とに顕著なタンパク質合成がみられる。胚盤形成期のタンパク質合成は新生RNAに依らないものであろうと考えられていた。このタンパク質合成に関し, 未受精卵を供試して, このタンパク質合成が新生RNAによらないものであることを証明した。すなわちまず, Ficoll 密度勾配遠心法により分離したRNP顆粒に含まれるRNA分子を分析して, リボソームを含む顆粒, heterogeneous RNAを含む顆粒および4stRNAを含む顆粒とに分別した。そしてheterogeneous RNAを含む顆粒中のRNAが胚盤形成期のタンパク質合成の基になっていること, さらにmRNAを poly ARNAとして分離し, これが翻訳活性を有していることを確かめた。従ってこれらの結果から, カイコの未受精卵に母親由来のいわゆる母性mRNA (maternal RNA) が存在し, これが初期発生におけるタンパク質合成の基になっていることを明らかにした。

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