日本蚕糸学雑誌
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カイコの温度感受性変異“縞翅蛹”について
山本 俊雄
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1984 年 53 巻 6 号 p. 501-505

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抄録

蚕糸試験場で保存する多化性系統のピュアマイソールを熟蚕から化蛹までの間, 20℃の低温で保護したところ, 蛹の翅部に縞状の黒色斑紋が発現することを見いだした。遺伝子分析の結果, 常染色体上の単一劣性遺伝子により発現することが判明したので, この形質を縞翅蛹 (black-striped pupal wing, 記号 bpw) と命名した。bpw の発現に及ぼす温度の影響する時期 (感温期間) を調べたところ, 吐糸終了直後から化蛹するまでの期間であり, ピュアマイソール系 bpw の場合, 20℃で約2日間であった。つぎに保護温度の高低と bpw の発現との関係を調べた結果, bpw の発現を制御する温度の範囲は非常に狭く, bpw は20℃以下で完全に発現し, 23℃以上では発現が抑制された。また, 21~22℃においては縞翅蛹から正常蛹に至る種々の濃度の個体がほぼ連続的に発現した。以上のことから, bpw は温度感受性の著しく高い形質であると判断された。

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