日本蚕糸学雑誌
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家蚕人工飼料における油脂の変質について
今西 重雄
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1985 年 54 巻 2 号 p. 134-137

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抄録

家蚕人工飼料の光照射による飼料価値低下の原因は油脂の変質にあると考えられている。そこで, 油脂の変質機構について検討を行った。その結果, 光照射により油脂が過酸化物に変質する主な原因に飼料成分の桑葉粉末と大豆油が関与することを認めた。桑葉粉末のアセトン可溶画分, ホウレンソウから抽出した粗葉緑素, 市販品の葉緑素, クロロフィル銅カリウム塩, ローズベンガルをそれぞれ添加した準合成飼料では光照射により油脂の過酸化物が生成した。しかし, これらを含まない準合成飼料では光照射の有無にかかわらず過酸化物はほとんど増加しなかった。従ってこれらの色素は飼料中の油脂を酸化変質させることが認められた。飼料のpHが低値ほど油脂の過酸化物は増加することが有機酸および無機塩混合物などの飼料成分の検討から明らかになった。アスコルビン酸は飼料中の油脂に抗酸化効果を示すことが認められた。以上の結果から, 飼料中の油脂は桑葉粉末の葉緑素および飼料の低pHの関与のもとに過酸化物に変質したことが考えられた。

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