日本蚕糸学雑誌
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細菌による繭中死亡蚕と繭中の細菌汚染
岩波 節夫榎本 末男富田 健夫
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1985 年 54 巻 4 号 p. 278-283

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抄録

1981年に茨城県下で収集した繭中死亡蚕の細菌学的調査を行った結果, 20~30%が敗血症による死亡であることが推察され, 蛹態死亡個体でその割合が高かった。病原細菌としてSerratia marcescens, Pseudomonas sp., Proteus sp., Streptococcus faecalisが分離され, 初秋蚕以降の蚕期でSerratia marcescens が多数を占めていた。
Serratia marcescensと蚕に病原性のあるStreptocococcus faeciumを桑葉に塗布し, 5齢5日目蚕に摂食させた場合の死亡蚕は, Serratia marcescencでは蛹態死亡が, Streptocococcus faeciumでは幼虫態死亡が多くみられた。また繭中の脱皮殻から接種細菌が多量に分離されたことから, 蚕体に附着した細菌が繭中に持ち込まれることが確認され, 脱皮殻が繭中の細菌汚染源になっていることが推察された。繭中の細菌は高温多湿条件で容易に増殖し, 繭中汚染を高めた。病原細菌によって汚染されている繭中では, 出血した蛹は細菌感染によって死亡することが確認された。

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