日本蚕糸学雑誌
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水耕による濃度試験からみた桑のリン酸栄養の指標
川内 郁緒高岸 秀次郎
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1985 年 54 巻 4 号 p. 284-289

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抄録

培養液中リン酸濃度を0~15mMの範囲で8段階に変えた水耕試験結果から桑のリン酸栄養状態を示す指標を検討した。その結果, リン酸濃度が1/20mM以下でリン酸欠乏症を呈した。8mM以上の高濃度でも外見上異常は認められなかった。リン酸濃度の増大にともなって各器官の含有率が増大した。過剰状態では桑葉中の他の無機組成も変動したが, 正常な生理機能の阻害は認められなかった。吸収されたリン酸の樹体各器官への分配には葉柄および根が調節器官として機能するものと考えられた。葉身または葉柄の平均リン酸含有率と収穫量 (乾燥全葉重) との関係により, 葉身で0.3%, 葉柄で0.2%以下は欠乏, それぞれ0.3~0.5%, 0.2~0.5%は正常, それ以上0.9%および1.6%まではぜいたく吸収, さらに高含有率を示す場合は過剰状態にあるものと推定された。また中上位付近の桑葉を供試し, 葉身, 葉柄におけるリン酸含有率の比較から葉身>葉柄の場合を欠乏, 逆の場合をぜいたく吸収あるいは過剰, 葉身≈葉柄を正常とする栄養診断の新たな方法を導き, 均衡した場合の含有率を0.4%と推定した。

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