日本蚕糸学雑誌
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カイコの成虫期におけるアラタ体の超微形態の変化
伴野 豊赤井 弘
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1988 年 57 巻 5 号 p. 431-437

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抄録

成虫期のアラタ体は雌雄間, 交尾などによって形態的な差異はみられないが, 羽化後の経過と共に変化した。その主な特徴は, 1) 羽化直後からアラタ体細胞中には多数の小型の空胞が増加してくる。羽化72時間を経た個体の空胞は大型化し細胞質の大半が空胞化する。2) 神経分泌軸索は, アラタ体の周縁部と内部に見出されるが, 内在する顆粒には暗調顆粒と空胞が認められ, 後者が比較的多い。3) アラタ体細胞内にはミトコンドリアが広く分布し, 羽化直後ではクリステ構造が明瞭であるが, 経過と共に不明瞭となる。4) 核内にはクロマチンや核小体が一様に分布しているが, 核小体のRNP顆粒は消滅し, 全体に低調な様相を呈する。5) 細胞質にはライソゾームが経過と共に増加し, 基底部は解離する。以上の細胞形態の変化から, 成虫期のアラタ体は組織解離が進行する状態にあるものと判断される。

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