日本蚕糸学雑誌
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家蚕における繭の解じょと絹糸腺セリシンとの関係
羽賀 篤信土井 良宏渡辺 忠雄坂口 文吾
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1988 年 57 巻 6 号 p. 451-459

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抄録

繭の解じょ率ならびに繰糸条件に特異性を有する蚕品種を用いて, 絹糸腺セリシンのスラブ電気泳動分析を行い, S-A, S-B, S-Cの3成分に分画してそれらの系統間変異を見出した。これら3成分はいずれも中部絹糸腺前区において合成分泌されているので, 繭糸外層のセリシンIの主成分であり, 解じょ率及び繰糸特性と深い関係を有するものと判断した。解じょ不良系にはS-A, 良好系にはS-Bがそれぞれ検出されたが, 両成分のアミノ酸組成は異なっており, Ap/An比はS-Bで大であった。さらにS-A, S-Bを支配する遺伝子が第11連関群に属することを確認して, K遺伝子を標識としセリシン成分の型と解じょ率との関係を調べたが, 明確な相関はみられなかった。しかし, K個体と+個体との繭の解じょ率を比較すると, 明らかに+の方が良好であった。以上の結果から繭解じょの遺伝的支配機構として少なくとも外層セリシンの組成と, 吐糸速度などの営繭運動とが関与するものと考えられる。

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