日本蚕糸学雑誌
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家蚕の血液浸透圧及び卵汁の浸透圧に及ぼす飼料の影響
北沢 敏男大槻 良樹
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1988 年 57 巻 6 号 p. 500-505

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抄録

家蚕幼虫期の飼料条件が, 熟蚕期以降化蛾に至るまでの血液浸透圧, 並びに卵汁の浸透圧に及ぼす影響について検討した。熟蚕の血液浸透圧は250~260mOsm/kgで, 桑育蚕と人工飼料育蚕との間ではほとんど差がみられなかった。その後, 桑育のカイコの血液浸透圧は吐糸及び前蛹期に上昇して蛹化時に約300mOsm/kgに達し, 蛹化から羽化まではほぼ一定のレベル (290~300mOsm/kg) で推移した。一方, 人工飼料育したカイコの血液浸透圧は, 前蛹期及び蛹期を通じて桑育したものより常に30~40mOsm/kg高い値を示した。さらに, 人工飼料育蚕の卵汁の浸透圧も桑育したものより高かった。こうした違いが生じる原因を追究するため桑葉と人工飼料の組合せ実験を行ったところ, 人工飼料育したカイコの5齢後半に3日間だけ桑葉を与えると, 蛹の血液及び卵汁の浸透圧が全齢桑育したものと同程度まで低下することが明らかになった。人工飼料中の桑葉粉末の含量の違いは, 血液及び卵汁の浸透圧に何ら影響を及ぼさなかった。

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