日本蚕糸学雑誌
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消石灰液による核多角体の溶解とウイルス粒子の不活化
岩下 嘉光周 垂欽
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1988 年 57 巻 6 号 p. 511-518

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抄録

消石灰液による核多角体タンパク質の溶解と包埋ウイルス粒子の不活化様相について, 感染調査と電子顕微鏡観察を行った。飽和液に2分, 飽和液の2倍液に30分の処理でウイルスは完全に不活化された。しかし, 飽和液の2倍液, 4倍液の5分処理ではそれぞれ29%及び91%の発病率を示し, 溶液濃度を稀釈するに従って不活化効果が低下した。飽和液に多角体を浸漬すると, 多角体タンパク質は急速に溶解した。溶解と共に多角体は互に融合して不定形塊状となり, 更に金米糖状, 菊花状を呈するものもあり, 逐には形状を消失してコロイド状となった。次に飽和液の8倍液に5分間浸漬し, 溶解の様相を電子顕微鏡により観察を行った。多角体の内部に向って多数の溶解路が形成され, ウイルス粒子のソケットからソケットへと通じ, 同時にウイルス粒子のヌクレオキャプシッドが溶解し, 続いて膜系が崩壊した。多角体の溶解は更に進行し, 大亀裂を生じ, 逐には崩壊した。

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