日本蚕糸学雑誌
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クワの芽の分離培養におけるコルヒチン処理効果
押金 健吾庄 東紅
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1990 年 59 巻 3 号 p. 187-195

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抄録

クワの分離芽培養を育種に利用する立場から, in vitro における倍数体桑の育成を目的として, 所定濃度のコルヒチン液およびコルヒチン液を含むMS培地に2, 3倍性クワ品種の分離芽を置床し, 所定時間浸漬または培養による処理を行った。これらの処理を施した後, 培養して得られた個体について形態ならびに染色体数の変異などを調査し, コルヒチン処理の効果をしらべた。実験は3回繰返したが, 処理個体中から形態的に正常で, 染色体数2n=84を算える6倍体が得られた。この6倍体は島の内, 福島大葉 (各3X) の分離芽を浸漬または培養したもので, いずれもMS+BA1mg/l+3%フラクトース培地で前培養後それぞれの処理を行い移植したものであった。育成個体の細胞分裂は正常で, 混数性細胞は認められなかったが, 他の2, 3X品種における異常個体は, 2n=28および42の正常細胞に混じて, 前者中に2n=56(4X), 後者中に2n=84(6X)と, 両者とも高次倍数性細胞を有する混数体が認められた。これらの結果は, クワの芽の分離培養におけるコルヒチン処理が, 倍数体の誘発に利用できることが示唆された。

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