日本蚕糸学雑誌
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中国蚕品種「錦綾」における繭糸の物理的性質の雌雄差
飯塚 英策李 秋蓮
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1991 年 60 巻 6 号 p. 425-431

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抄録

中国四川省の代表的交雑種「錦綾」の繭糸について, その物理的性質を雌雄間で比較した。先ず一粒の繭糸においてその繊度が全長に亙って緩やかに変化し, 動弾性率, 強度, 伸度, 結晶化度および密度が繊度に関して有意な線型相関を示すことから, 全長から等間隔に選ばれた数ケ所の試料の測定によって, 繊度との関連で繭糸の平均的な物理的性質を推定しうることが知られた。次に多数の繭から得られた繭層部位別の試料集団においても部位に係わらず繊度との有意な線型相関が認められ, 雌雄別に平均の物理的性質が求められた。動弾性率および結晶化度の平均値は雌のカイコの繭糸の方が幾分大で, 雌雄の平均繊度差を考慮して同一繊度における期待値を回帰直線から求めて比較するとその差は顕著となり, 同時に強度, 伸度, 密度においても有意な差を生じた。従って少なくともほぼ繊度が等しければ, 雌の繭糸の方が雄の繭糸よりも結晶性が高いと結論される。

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