1994 年 63 巻 1 号 p. 57-63
天蚕の休眠卵のホスファチジルエタノールアミン (PE) とホスファチジルコリン (PC) の構成脂肪酸割合におよぼす温度の影響を, 25℃, 5℃と0℃に保護した卵を用いて検討した。25℃保護卵では産卵直後から休眠開始期にかけてPCのC18:3が増加し, C18:2が減少し, PEではC18:2の減少に伴いC18:1が増加した。25℃保護卵を産卵70日後に5℃と0℃に冷蔵すると, いずれの保護卵のPCには顕著な変化はみられなかった。また, 0℃保護卵のPEでも変化なかったが, 5℃保護卵のPEでは覚醒後C18:3の減少に伴いC18:1が増加した。さらに, 覚醒後の卵を25℃に移し, 胚発育させたところ, PEではC16:0の減少とC18:3の増加, PCではC18:1の減少とC18:3の増加がみられた。これらの結果は, 天蚕卵の休眠進行に伴いPE構成脂肪酸の飽和化, 覚醒後の胚発育に伴ってPE, PCともに構成脂肪酸の不飽和化が起こっていることを示している。