日本蚕糸学雑誌
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グリオキザール・水溶性ウレタン・ヒドラジンによる樹脂加工絹織物の防しわ性の改善
加藤 弘武部 豊
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1994 年 63 巻 4 号 p. 269-277

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抄録

グリオキザール系樹脂・熱反応型水溶性ウレタン・アルキルヒドラジンを複合使用して, 絹織物を樹脂加工したときにおける樹脂の付着率および防しわ性などの物理的性質の変化および加工布からのホルムアルデヒド溶出量について検討した。
グリオキザール単独処理よりもグリオキザールに水溶性ウレタンをブレンドした樹脂加工液を用いた方が防しわ性は良好であった。キュアリング温度は高いほど樹脂付着率が高く, 樹脂定着率も向上することが認められた。
ソーピング後の樹脂付着率は, グリオキザールの種類によって大略NS-18>NS-19>Z-5の順となり, メチロール側鎖とヒドロキシル側鎖のアルキル基 (R) がメチル残基CH3よりも水素イオンH+に置換されている割合が大きいグリオキザールの順序とよく符号していた。水溶性ヒドラジンHN-200をブレンドした加工布はソーピング前の樹脂付着率は高かったが, ソーピングの際の樹脂脱落量も大きかった。これは樹脂や絹繊維と反応しない水溶性ヒドラジンが脱落しやすい状態で樹脂中に存在することに起因していると考えられる。
加工布からのホルムアルデヒド溶出量は程度の差こそあれ, 常にグリオキザールがNS-18>NS-19>Z-5の順序にホルムアルデヒドが検出された。ソーピング後の検出量は40-50μg/gと算出されたが, これは厚生省令で定められた2才以下のベビー用衣料にはホルムアルデヒドは検出されない, すなわち吸光度差 (A-A0) が0.05以下には不適格であったが, 一般下着類の75μg/g以下を達成した値であった。

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