日本蚕糸学雑誌
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プロピオン酸類のBT (Bacillus thuringiensis) 剤に対する殺虫活性阻害効果について
松本 信弘
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1999 年 68 巻 4 号 p. 333-338

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抄録

BT剤の生物検定は, BTを含む人工飼料を用いたカイコへの経口投与によって行われる。そこで, 脂肪酸系の防腐剤であるプロピオン酸類を飼料に添加したときのBTの殺虫活性に対する影響を調べた。その結果プロピオン酸類の3種の防腐剤 (プロピオン酸カルシウム, プロピオン酸, プロピオン酸ナトリウム) においてBT剤の殺虫活性に対する阻害効果が確認された。これらの阻害は, ふ化時から同酸類を混合した人工飼料で飼育した場合に一層顕著で, 湿体重量比0.06% (w/w) の同酸類を混合した場合の致死率は, 混合しない場合の約1/5に抑制された。一方でカイコ幼虫の食餌量やBT毒素タンパクによる体重増加抑制には有意差 (Dankan's 多重解析) が認められなかった。すなわち同酸類はBT剤による生長抑制に対しては影響を与えず, BT毒素による致死活性を明確に阻害した。

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