日本蚕糸学雑誌
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クワ萎縮病感染シュートにおける病徴発現の維持と多芽体を経由した病徴の消失
岡 成美山ノ内 宏昭川北 弘町井 博明
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1999 年 68 巻 4 号 p. 339-344

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抄録

萎縮病感染クワ (Morus acidosa) から誘導した培養シュートは, 3年間継代後でも萎縮病徴を失わず, 電子顕微鏡で観察すると, 維管束細胞に phytoplasma を含んでいた。萎縮症状を示す培養シュートの茎頂から液体培養によって多芽体を誘導した。正常個体及び萎縮病感染個体の間で, 多芽体の形態及び増殖率には差がなかった。萎縮病感染個体由来の多芽体から再生したシュートの中に萎縮病徴を消失するものがあった。病徴の消失したシュートは, 順化後圃場に定植してからも病徴を示さず正常に生育した。圃場で生育した個体から再度誘導した培養シュートの維管束細胞を電子顕微鏡で観察したところ, phytoplasma は認められなかった。また, ファイトプラズマの16S rRNA遺伝子を特異的に増幅するプライマーを用いたPCRで, 感染個体でのみ目的とする1,370bpのバンドが検出された。以上の結果から, シュートの継代培養条件下で phytoplasma の増殖と萎縮病徴が長期間安定的に維持できること, 及び多芽体の誘導とシュート再生の過程で病原体と萎縮病徴が消失する場合のあることが示された。

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