日本蚕糸学雑誌
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北海道の森林土壌における Bacillus thuringiensis の分布
菊田 治典五十嵐 倫子立林 千夏荻野 幸子村田 顕治
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2001 年 70 巻 1 号 p. 1-9

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抄録

B. thuringiensis 野生株の serovar フローラとその分布を明らかにする目的で, 自然環境が良く保存され, 北海道低地の代表的な森林の野幌森林公園および特に樹木の保存が良好な酪農学園大学野外礼拝堂において, 調査地域を設定し, 各々200地点の区画した調査地点土壌から B. thuringiensis の分離を行い, B. thuringiensis の分布, 走査電子顕微鏡による副芽胞小体の形態および serovar の分布を明らかにした。1) 野幌森林公園からB. thuringiensis が39株分離された。分離された地点は17地点で調査地点の8.5%となった。17地点中14地点は1株しか分離されない低密度であった。分離株は, H5a5b, H16, H4a4c, H14で, H5a5bが約61%であった。副芽胞小体は走査電子顕微鏡で観察し, bipyramidal, bipyramidal & cuboidal, bipyramidal & cuboidal & irregular, irregular, cuboidal 型PIが確認された。この中でIL1-7-2株 (H3a3b) は基準株と異なり, bipyramidal 型PIではなく cuboidal 型PIを著しく多く産生する新しい菌株と考えられた。2) 野外礼拝堂周辺からは70株の B. thuringiensis が分離された。分離された地点は26地点で調査地点の13%から分離された。26地点中24地点では分離された菌株は4株以下の低密度であった。分離株は, H1, H3a3b, H4a4b, H5a5b, H6, H7, H8a8b, H10, H14, H16, H24a24bであった。これら分離株中60%がH5a5b, PIの形態としては, collapsed bipyramidal, collapsed cuboidal 型が観察された。この中でMR10-3-3, MR10-5-1, MR10-5-2, MR10-5-3, MR10-6-2, MR10-6-3およびML4-2-1の7株は基準株 (H3a3b) が産生するPIとは異なる cuboidal & irregular 型PIを産生するので新規性の高い菌株と判断された。

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