抄録
4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネートをハードセグメントとする熱可塑性ポリウレタンにおいて,熱処理により形成するミクロンオーダーのドメイン構造と力学特性の向上について検討した.多段階の熱処理法(樹脂を融点以上に加熱・溶融して,一旦,ガラス転移点付近に急冷・固化したあと,再び融点付近までの加熱と最終的な熱処理温度への再冷却)を行うことにより,熱可塑性ポリウレタンにおいてミクロンオーダーのドメイン構造が効率的に発現することが見いだされた.また,ミクロンオーダーのドメイン構造が出現した熱可塑性ポリウレタンでは,実用上の融点およびガラス転移点にあたる,貯蔵弾性率(Log E′)の落込み温度および損失正接(tan δ)のピーク温度がそれぞれ高温側へ約 35℃ および低温側へ約 10℃ シフトした.これにより,ポリウレタンに期待されるエラストマー材料としての力学特性を維持できる温度範囲(ゴム状領域)が最大で 45℃ も拡大したことになる.つまり,同じ原材料を用いながらも,多段階の熱処理法を行うことにより,熱可塑性ポリウレタンの耐熱性および耐寒性をともに向上させることができ,用途範囲が広がることが期待される.