2007 年 64 巻 4 号 p. 254-260
バイオマス資源であるパルプ粕に直鎖脂肪酸エステル化を施したエステル化パルプ粕(EP)[ヘキサノイル化パルプ粕(HP),オクタノイル化パルプ粕(OP)およびラウロイル化パルプ粕(LP)]の合成を行った.HP, OP および LP の合成において,グルコースユニット中のほぼすべてのヒドロキシル基をエステル化することが可能であった.反応条件をコントロールすることによって,さまざまな置換度(DS)を有する EP を合成した.EP の DS が高くなるにつれて,融点(Tm)は低下する傾向を示した.DS が同程度の場合,置換基の鎖長が長い EP ほど Tm は低くなる傾向を示した.GPC 測定の結果から,EP は比較的低分子量(1.0~5.0×104)を有することが認められた.EP と環境適応材料であるポリオキサレート(POX)とのブレンド化において,そのブレンド状態は,EP の DS に大きく影響を受けることが確認された.DS が 3.0 の LP と POX から調製した複合膜の TEM 測定において,ミクロ相分離構造が確認された.