2007 年 64 巻 4 号 p. 261-267
Poly(1-oxotrimethylene)(ECO)は,ZnCl2 などのハロゲン化金属塩水溶液に溶解する.金属陽イオンが ECO のカルボニル基への配位することによって,ECO が溶解していると考えられるが,陽イオン種と ECO の溶解性に対する規則性は明確ではなかった.しかし,陰イオンに対しては Cl-, Br-, I- の順に ECO を溶解可能な金属塩水溶液の種類が多くなる傾向が見られた.ZnCl2 に CaCl2 などの他の金属塩を混合すると,その ECO 溶液は相分離温度を持ち,相分離温度以下では ECO の結晶化によりゲル状に固化した.この現象を利用して,相分離温度より低い温度の凝固浴で湿式紡糸を行うと,繊維は凝固浴中でゲル化するために断面構造が均一となり,超延伸することで高強度の ECO 繊維が得られた.また,ECO 溶液の相分離温度が高い方がゲル化の速度が速く,ECO 繊維の強度がより高くなる傾向であった.