2010 年 67 巻 3 号 p. 179-186
筆者らは,コンピューターをもちいてタンパク質の運動や電子状態をしらべ,タンパク質が機能を果たすしくみを研究している.たとえば,特定の部位に外部から刺激がくわわったとき,その刺激(情報)はどのような経路を伝わって分子を伝わっていくのか,どのようなメカニズムで構造変化を起こすのか,電子移動反応にかかわるタンパク質では,電子供与体から電子受容体へ,どのアミノ酸残基を伝わってどのように電子が流れるのか,タンパク質内部でプロトン移動反応が起こるときには,どのような構造変化が引き金になるのか,などの問題をしらべている.このように,タンパク質のはたらきを物理の言葉で表現し,実験結果や遺伝情報解析とつきあわせることで生命現象のメカニズムに肉迫できるのではないかと考えている.